株式会社モビーディック

なぜZOZOMETRYの「精度」は信頼できるのか?ウエットスーツのパイオニア・株式会社モビーディックとの挑戦が証明する、デジタル採寸の現在地

オーダーメイド服 コラム

2025.07.29

左:保田遼太郎さん 右:保田守さん


ミリ単位のフィット感が、アスリートのパフォーマンス、時には生命さえも左右するウエットスーツの世界。既製品も存在しますが、その真価は一人ひとりの身体に完璧に合わせたオーダーメイドでこそ発揮されます。だからこそ、採寸における「精度」は何よりも重要視されてきました。

1963年の創業以来、日本のウエットスーツ業界を牽引してきた株式会社モビーディック。オーダーメイドに求められる採寸の精度を、長年にわたり追求し続けてきた先駆的な企業です。

同社は過去約20年にわたり、デジタル採寸技術の導入を試み、そのたびに「精度の壁」に阻まれてきたといいます。そんなモビーディック社が監修者としてZOZOと改善の取り組みを続けた結果、ついに「これならウエットスーツ製作にも使える」と認めたソリューションがZOZOMETRYです。

オーダーメイドウェア市場の中でも、とりわけ厳しい精度基準が求められるウエットスーツ製作において、ZOZOMETRYはいかにして「精度の壁」を乗り越え、信頼を勝ち得たのでしょうか。その具体的な取り組みと、精度を担保した過程について、株式会社モビーディック 代表取締役会長であり、一般社団法人日本ウエットスーツ工業会の会長を兼任される保田守さん、製造部の保田遼太郎さんにインタビューしました。


約20年間超えられなかった「精度の壁」。過去のデジタル採寸が抱えていた課題とは

オニールチームライダー 新井洋人 Hiroto Arai
国内のみならず海外を舞台に活躍するプロフェッショナルライダー
株式会社モビーディック提供

 

ー本日はありがとうございます。まず、モビーディックさんが長年デジタル採寸に挑戦されてきた歴史についてお伺いします。20年近く前に導入されたという3Dスキャナーでは、どのような課題があったのでしょうか?

保田守さん:当時は研究目的で導入したのですが、実用化には至りませんでした。一番の課題は、やはり精度です。例えば脇の下など、レーザーが届きにくい箇所はデータが欠損してしまう。それを計算式で補う形だったので、どうしても正確性に欠けていました。

また、例えば「ウエストの一番細いところ」と言っても、その定義が感覚的で、システムに落とし込むのが非常に難しかった。手採寸の基準自体も今ほど厳密ではなく、職人の勘に頼るところが大きかったので、デジタルとのズレが埋められませんでした。

ーその後、数年前にはスマートフォンのアプリも試されたそうですが、こちらはいかがでしたか?

保田守さん:スマホ採寸は手軽さが魅力でしたが、これも精度の問題がありました。海外のお客様に対して、オンラインで気軽にオーダーウエットスーツが購入できるようにスマホ採寸を導入したのですが、特に海外のユーザーは、スキャン時にサイズの合っていないルーズな服を着ていることが多く、計測すると「とんでもない数字」になってしまう。これでは全く使い物になりませんでした。

また2枚の写真から体型を類推し採寸値を出す方式を採用していたので、どのような体つきかによって出せる精度がまちまち。この採寸方法ではどうしても高い精度を安定的に出すことが難しいのではないかと思いました。

やはり少ない写真から採寸値を算出する方法では、求められる精度に限界があったんですよ。トライアルで導入したものの、やはり数年で中止せざるを得ませんでした。


対話と検証を愚直に繰り返す。ZOZOMETRYが『精度の壁』を越えたアプローチ

モビーディック社オフィスでの計測箇所すり合わせの様子

 

過去の経験から「デジタル採寸は一筋縄ではいかない」と痛感していたモビーディック社。それでも業界の未来のために技術を探し続ける中で、ZOZOMETRYと出会います。そこには、これまでの技術とは一線を画すアプローチがありました。

ー数々の挑戦を繰り返す中で、今回ZOZOMETRYを試そうと思われたきっかけは何だったのでしょうか。

保田守さん:我々が諦めずに情報を集めている中で、「あのZOZOSUITはまだ頑張っているんだ」と(笑)。であれば、どんなものか一度話を聞いてみよう、というのが正直なところでした。

ー進化を続けていたZOZOSUITを活用したサービスであるZOZOMETRYを触ったときの第一印象はどうでしたか?

保田遼太郎さん:第一印象で驚いたのは、撮影枚数です。ZOZOMETRYは12枚も撮りますよね。最初は「念入りだな」と思いましたが、過去のアプリのように2枚でうまくいくとは考えていなかったので、むしろ「これだけ撮るなら、システムが根本的に違うのかもしれない」という期待感がありました。

【コラム】なぜ12枚? ZOZOMETRYの精度を支える「3Dモデル生成」のこだわり

ZOZOMETRYの大きな特徴の一つが、12枚という撮影枚数です。一般的なスマホ採寸サービスが2枚程度の撮影で完結する中、なぜこれほど多くの枚数を必要とするのでしょうか。その理由は、身体を「点」や「線」ではなく、一個の完全な「立体」として捉える思想にあります。

多くのサービスで採用される2枚撮影では、身体の「正面」と「側面」という二次元的な情報しか得られません。そのため、身体の厚みといった奥行きの情報は、計算による「推測値」となりがちで、これが誤差の一因とされていました。

それに対し、ZOZOMETRYが目指すのは精密な『身体表面の3Dモデル』の生成です。

特許技術にもあるように、「複数角度から複数回撮影」することで、計測スーツ上に配置されたマーカーの三次元座標を高精度に算出します。このプロセスを経て、単なる寸法データではなく、お客様一人ひとりの身体の凹凸や傾斜までを忠実に再現した3Dモデルが生成されるのです。

12枚という一見すると手間のかかるプロセスこそが、ZOZOMETRYの精度に対するこだわりの表れだと言えるでしょう。



ーZOZOSUITはどう捉えていますか?

保田守さん:ZOZOSUITの着用が必要な点も、他のアプリとは違う点だと考えています。ラッシュガード一つとっても様々な種類があるので、ユーザーが着るものを統一しないと、正確な比較はできません。ZOZOSUITによって計測環境を標準化できるのは、精度を担保する上で非常に重要です。

ー技術的なアプローチに加え、他のサービスとの違いはどこにありましたか?

保田守さん:一番は、我々の要望に合わせて採寸定義を修正してくれたことです。以前は、提供されたシステムをそのまま使うのが当たり前で、出てきた数値にこちらが合わせるしかなかったわけですね。ですが、ZOZOさんは私たちが利用している日本ウエットスーツ工業会の定義の認識を合わせるため、石巻にある弊社オフィスまで来て、対話と検証を重ねてくれました。

1年以上の長い時間をかけながら、ZOZOさんの採寸開発の専門チームも交えて改善を進め、システムに追加・修正してくれた。その結果、日本ウエットスーツ工業会の採寸定義31箇所*をZOZOMETRYで測れるようになりました。この「すり合わせ」の姿勢が、全く違いましたね。



*ウェットスーツ工業会 採寸箇所全35箇所のうち、身長、体重、足長、頭囲を除いた31箇所を採寸可能


【コラム】さらなる高みへ。ZOZOSUITの進化と「精度」への飽くなき探求

モビーディック社との取り組みで、その実用性が証明されたZOZOMETRY。その中核をなす計測技術として初代ZOZOSUITは2017年にリリースされてから進化を続けてきました。その後、2020年10月に新しいZOZOSUITによって、計測精度を飛躍的に向上させています。

その進化のポイントは、スーツに配置されたマーカーの数にあります。

初代ZOZOSUITのマーカーが約400個だったのに対し、進化したZOZOSUITでは平均20,000個と、実に50倍に増加しました。これにより、人間の目では捉えきれないような身体の細かな凹凸までデータ化することが可能になりました。

さらに、3Dモデルを生成するアルゴリズムも大幅に改善。撮影中のわずかな動きを補正する技術などが加わり、高精度の3Dレーザースキャナーと比較しても平均誤差3.7mmという、極めて高い精度を実現しています。

この「自宅で手軽に、レーザースキャナー級の精度で計測できる」という進化が、モビーディック社のようなプロフェッショナルの現場で「使える」と評価される大きな要因となりました。

ZOZOSUITの精度への飽くなき探求は、あらゆる業界の“オーダーメイド”の可能性を広げています。



「これなら使える」—精度の証明。モビーディック社が認めたZOZOMETRYの実力と未来への可能性

左:保田守さん 右:保田遼太郎さん

 

モビーディック社とZOZOMETRYは、対話と技術的な改善を重ねた上で、最終的な精度検証として、計測データに基づいたウエットスーツを実際に製作。最も重要なフィッティングを確かめるため、実用テストを行った。

ー様々な検証を経て、ZOZOMETRYの精度に対する最終的な評価をお聞かせください。

保田守さん:ZOZOSUITを使った計測は、実用に足る精度が出ていると判断しています。実際にウエットスーツを作ってフィッティングを確認しましたが、これなら使えるな、と。テスト段階で出た誤差もすでに解決されてますし、問題ないと確信しました。

ーモビーディック様に「使える」という評価をいただいたことは、精度が信頼できる証と言えると思います。一方で、将来的にはさらに手軽な「ZOZOSUITなし計測」も期待されるかと思います。その可能性については、どうお考えですか?

保田守さん:ウエットスーツのようにフィット感がシビアな製品だからこそ難しい問題ですが、「ZOZOSUITなし計測」も、将来的には必ず利用できるようになるだろうと非常に期待しています。

保田遼太郎さん:現状でも、「ZOZOSUITなし計測」の計測データが大きく外れているわけではありません。数値の傾向を分析して改善を重ねれば、実用化は十分可能だと感じています。ZOZOさんの継続的な開発力に期待したいです。

ー確かな精度が担保されたことで、どのようなビジネスの可能性が見えてきましたか?

保田守さん:そうですね、可能性は色々見えてきました。まず大きいのは、これまで非常に難しかったオーダーメイド品のEC展開です。特に、体型が多様な海外市場への挑戦が、これで現実的になりますね。

それに、国内の販売店での活用も大きく変わると考えています。例えば、女性のお客様を男性スタッフが採寸することへの抵抗感や、そもそも「人に身体を測られたくない」というプライバシーの問題は、これまで非常にデリケートな課題でした。ZOZOMETRYがあれば、お客様は誰にも気兼ねすることなくご自身のスマートフォンで採寸できるため、販売店はよりスムーズに、そしてお客様にはより快適にオーダーを提案できるようになります。

また、BtoBの活用も期待しています。例えば、全国に拠点を持つお客様から注文があった際、これまでは採寸のために各地へ赴いていました。その移動コストと時間を、ZOZOMETRYが解決してくれる可能性があります。

ー採寸の課題が解決された先に、どのような未来を描いていますか?

保田守さん:最終的な目標は、採寸データと設計用のCADを自動連携させ、裁断までの製造工程全体をDX化することです。寸法を手入力する現在の工程を自動化できれば、生産性は劇的に向上します。ZOZOMETRYは、単なる採寸ツールではなく、我々のビジネスそのものを変革する可能性を秘めていると考えています。

 

「対話」と「実証」が築いた信頼。伝統と革新の融合が拓く未来

株式会社モビーディック提供

 

ZOZOMETRYの精度は、単なる技術的なスペックだけで成り立っているわけではありません。それは、クライアントと真摯に向き合う「対話」の姿勢と、現場での「実証」を厭わない愚直なまでの取り組みによって築き上げられたものです。

「ZOZOSUIT」による確かな精度を基盤に、さらに「ZOZOSUITなし計測」という未来への期待も膨らみます。伝統的な“匠の技”と、対話する最新テクノロジーの融合が、日本のモノづくりの新たな扉を開きます。モビーディックとZOZOMETRYの挑戦は、まだ始まったばかりです。

専用アプリで身体データを
スマート計測管理。

高精度の身体計測・採寸で
手軽に業務を効率化できます。

お問い合わせはこちら